宮城県農山漁村発イノベーションサポートセンターでは、宮城県でイノベーションを行う農林漁業者等のサポートを行います。

>アクセスマップ

事例紹介

~宮城県農山漁村発イノベーションサポートセンターの事例紹介~

okinawa-silver-jinzai-活動報告トップに戻る

事例1:ひっぽのへそ大根

事例1:ひっぽのへそ大根

相談者:ひっぽのへそ大根生産組合(筆甫地区振興連絡協議会)

主な支援内容:マーケティング、ブランディング、販路開拓


どこにどうやって売ればいいのか

福島との県境近くにある丸森町筆甫地区。

こちらの名産品「へそ大根」は、

自分たちで育てた青首大根を輪切りにして茹で、

朝の気温が氷点下になる冬に1カ月間、

天日干しするというもの。

夜に凍り、昼に溶けてまた凍るという過程を繰り返し、

旨味がギュッと凝縮される。

その独特のビジュアルが

「ばばあのへそに似ている」と言われたことから

「へそ大根」と呼ばれるようになった。

▲見た目もユニークな「へそ大根」。水またはぬるま湯で戻して、煮物などに使用する。旨味がにじみでた戻し汁も煮汁として使うのがコツ

干し大根は他にもあれど、

昼と夜の寒暖差が激しいうえ、

風通しが良い筆甫地区だからこそ実現する

味の濃さと雑味のない風味。

そのおいしさはクチコミで広まり、

知る人ぞ知る珍しい食材となっていたが、

生産者である住民にとっては、

昔ながらの日常的な保存食。

販売といっても、近隣の直売所などに

少量、置く程度だった。

しかし2011年、

福島原発事故の影響で状況が一変。

地区の名産品として主流だった山菜や椎茸などが

のきなみ出荷できなくなった。

唯一OKとなったのが、このへそ大根だった。

「だったらこれをみんなで作り、

地区の収入源として育てるしかないと思いました。

でも、住民はほとんどが高齢者。

生産はできても流通にのせたり、

販売するノウハウは誰も持っていませんでした」

そう話すのは、

街づくりの若き牽引者である

筆甫地区振興連絡協議会の事務局長、吉澤武志さん。

吉澤さんたちは数年間の試行錯誤の末、

自分たちだけでは限界、と

知り合いから聞いて知った6次産業化サポートセンターに相談。

2016年夏から、

管理栄養士の資格を持つ食に詳しい

6次産業化プランナーが派遣されることになった。

市場で戦うために必要な装備

「まずは、市場で戦うための武器や戦略を整えましょう、と

言われました。

業界のことを一から教えてもらった感じ。

今まで何も知らない赤ちゃんみたいなものだったので、

目からウロコでしたね」と吉澤さん。

販路を開拓するには

バイヤーに商品を知ってもらう必要があるが、

その際、原材料や産地などが一目でわかる

FCPシート(商談シート)を用意すると有効。

また漠然とした感覚で行いがちな値付けも、

原材料費のほか人件費や流通コストなどもしっかりと計算し、

適正価格を算出しなければならないなど。

生産者だけでは知り得なかった戦略や装備について、

イチから学ぶこととなった。

▲商品の詳細をまとめたFCPシートは商談会の必須アイテム。右はへそ大根の調理例などを美しい写真で見せるバイヤー用リーフレット

▲テストマーケティング用に準備した3種類のパッケージ案。アンケートを実施し、支持が多かった1種類を採用する予定。こうしたデザインや印刷物にかかる費用は、プランナーのアドバイスにより補助金を活用することができた

 

▲仙台で行われた「みやぎまるごとフェスティバル2017」に出店。3種類のパッケージデザイン案でテストマーケティングを実施した

 月に一度、2時間程度のミーティングを重ねるペースで約1年半。

商品の写真をプロカメラマンが撮影し、

バイヤー向けのリーフレットも作成。

3種類のパッケージデザイン案を用意して、

アンケート調査などを行うテストマーケティングも実施した。

さらに、へそ大根の販売元となる組織の法人化についても検討。

そこには組織づくりに強いプランナーがもう一人、投入された。

「大切なのは、根拠あるマーケティングでしっかりと戦略を練ること」とプランナー。

結果を急ぐ事業者も多いが、

焦らず、じっくりと検討し、

本当に有効な道筋を見出し進む方が、

結局は早道だという。

そうして、ひと通りの装備が完了した「ひっぽのへそ大根」。

いよいよこの冬には宮城の小さな里山を飛び出し、

東京での商談会でデビューを飾る。

▲筆甫地区振興連絡協議会の事務局長を務める吉澤武志さん。これまでは生産者が作ったへそ大根を集め、地区の名産品として販売してきた。「今後は品質、量ともに安定した供給が課題」と語る

ページトップ